生理痛
2021.09.17

生理痛② ー三大処方ー

前回、生理痛の三大処方について触れましたので、そこから話を始めたいと思います。

下の図に三大処方と言われる当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸それぞれに入っている生薬を示しました。全く異なるイメージがある三つの処方ですが、こうしてみると共通する生薬も多いことが分かりますね。特に茯苓と芍薬は全ての処方に共通しており、三つの処方のベースになる病態が見えてきます。

誤解を恐れず一言で言ってしまえば、茯苓には体の不要な水(湿)を除く作用、また、芍薬には筋肉の痙攣を抑える作用があるので、この三つの処方は、生理前の水滞(浮腫)と子宮の筋肉が引きつれるような生理痛、という共通した目標を持っているということです。その上でさらにみていくと、当帰芍薬散と加味逍遙散に共通して入っている当帰は、血を補い子宮を成熟させる作用があるので、機能的に発展途上にある若年層に用い、加味逍遙散と桂枝茯苓丸に共通して入っている牡丹皮は血の鬱滞を除く作用があるので、子宮の発達は十分だけど新陳代謝がうまく行っていない成熟層に用いる、という特徴が分かってきます。

もちろん年齢だけでものは言えませんが、生理痛は子宮の成熟度によっても痛みの原因が少しずつ違っていて、ひとりの人の中でも状況は変わっていくものであること、名前が異なる漢方薬も実は共通点が多く、ある種グラデーションのなかに位置すること、がお分かりいただければと思います。その上で、次回からはさらにそれぞれの処方の特徴を掘り下げてみていきます。