感染
2022.12.17

風邪の漢方薬の効かせる飲み方 2022バージョン

今年は新型コロナとインフルエンザの同時流行の兆しです。昨年もお伝えしましたが、風邪の漢方薬の正しい飲み方について、もう一度お伝えします。

まず復習ですが、薬局などによく売られている総合感冒薬は、風邪の原因のウイルスを殺したり、封じ込めたりする力はありません。この薬の役割は風邪の症状である発熱や頭痛、鼻水などを緩和することですから、どんなウイルスが原因であれ症状を緩和する効果はありますが、風邪自体を早く治すことはできません。

一方、漢方薬は風邪のウイルスが体の奥に侵入する前に体温を上昇させ、ウイルスを撃退する力があります。風邪のとき薬がなくても熱は上がりますね。これはウイルスを撃退するために備わった生理的な反応ですが、この反応を助けることで一気に風邪を治してしまうのが漢方薬の戦略です。逆から言えば、風邪の漢方薬は体温が上がるように飲まなければ意味がありません。

また、風邪の漢方薬は薬局で市販されていますが、いくつか種類があって迷ってしまうことも多いと思いますので、今回は漢方薬の飲み方や選び方について、ざっくりとご説明します。

①漢方薬を飲むタイミング

背中がゾクゾクっとした時です。皮膚がザワザワする、首筋から筋肉がキュッと固まる、熱が出そうな予感がする、喉が引っかかる感じがある、そのくらいの症状でもう飲んでください。咳や鼻水、頭痛など風邪の典型的症状がなくても構いません。風邪かどうか迷ったら飲む、という位の前のめりな態度でいいと思います。もし、一日外出していて体が冷えた、温めようとお風呂に浸かってもまだ寒い、というときはもう迷わず飲んでください。

②漢方薬の選び方

ドラッグストアでよく見かける風邪の漢方薬は、麻黄湯、葛根湯、小青龍湯でしょうか。気の利いたところなら麻黄附子細辛湯や桂枝湯もありますね。

どの薬を選ぶか本当は明確な判断基準があるのですが、ややこしくなるので思い切って省きます。

子供→麻黄湯

大人→葛根湯

高齢者→麻黄附子細辛湯

寒気がした日はこれでいいです。

大人って何歳から何歳?とか細かいことは気にしなくていいですが、もう一少し付け加えるなら、

ふだんから元気でよく食べて疲れ知らずだ→麻黄湯

元気いっぱいというほどじゃないけど体力はある→葛根湯

体力の衰えを感じることが多い→麻黄附子細辛湯

という基準も併せて考えてください。そして、一番大切なのが飲み方です。これは薬によってちょっと違うのでそれぞれ説明します。

③麻黄湯・葛根湯の飲み方

薬局でこれらの漢方薬を見つけたら、成分表示を確認してください。どちらも麻黄という生薬が入っていますが、これが2gとか2.5gと書いてあったら、それは病院で出す漢方薬の半量で作られた商品です。いろんな事情でそうなっているのでしょうが、一晩で風邪を治す、という趣旨からすると用法どおりに飲んでも…。私ならまず1回分として倍量(病院での処方量)で飲みます(お子さんの場合は年齢に応じた量の病院処方量で)。

市販の漢方薬の用量用法の欄には「1日2包を食前に水かお湯で服用」と書いてあります。これもちょっと…。私が飲むなら「ゾクっと来たときに2包(病院処方の1回分)、30−40分待って汗が出てこなかったら、もう2包追加。必ずお湯で服用」です。

風邪の漢方薬は期を逃さずに、体温が上がって汗をかくまで飲む、これがキモですから、食前とか気にしないで一度に2包飲みます。水で飲むのは愚の骨頂、体を温めたいのですから必ずお湯で飲みます。一番おすすめは湯呑みにきざんだ生姜を入れ、ここに漢方薬の粉を振りかけて、熱湯を注いでかき混ぜながら飲む方法です。

なぜなら、例えば、葛根湯、麻黄湯、小青竜湯には、生薬として生姜が使われているのですが、エキス製剤ではどうしても生姜の効き目が弱くなってしまうからです。汗をかかせるために生姜はとても重要なので、ちょっと辛いなと思うくらいの生姜を足すことで薬の働きを強めます。生姜がお嫌いでなければ、薬自体も飲みやすくなりますので、ぜひ試してみてください。

漢方薬を飲めたら、しっかり着込むか布団にくるまって汗が出るのを待つ。しばらく待っても体が温まってこなかったら、それは薬が足りていないということなので、私ならもう1回2包飲みます。そして汗が出てきたらタオルで拭くなり、着替えるなりして体を冷やさないようにして朝まで眠ります。もし2回飲んでも汗が出てこなかったら、作戦を変えてホットタオルなどで首の後ろを温めて休みます。「食前」って書いてあるからといって、漢方薬を飲んだ後に律儀に食事を摂る必要はありません。食欲がなければ無理に食べなくていいです。でも水分はしっかり摂っておいてくださいね。

④麻黄附子細辛湯の飲み方

これは少し体力が落ちてきた方の風邪のお薬です。高齢になってくると風邪を引いても熱を出す体力もなくなりますが、そんな方に汗をかかせるお薬を飲ませると却って体が消耗して具合が悪くなってしまいます。麻黄附子細辛湯のかかせる汗はじんわり、という程度ですから、汗をかいた自覚がないくらいでちょうどいいです。通常は2包(病院量)で飲みたいですが、体重が30kgしかないおばあちゃんなら1包でもいいかもしれません。これも飲むときに食前にこだわる必要はありません。ただ、食の細い方だと食前に飲むと気持ちが悪くなることがあります。その場合は食後に飲むようにしてください。必ずお湯に溶かすようにお願いします。