頻尿の方でなくても、初診の際には必ず一日の排尿回数を伺っています。自分が何回排尿しているのか案外分かっていないものですが、一般的には日中7~8回、夜は0~1回が正常とされています。
なので、1日に9回以上は頻尿ということになりますが、尿の性状(色や泡立ち感など)に問題がなく日常生活に支障がなければ、基本的に慌てる必要はありません。(反対に1日5回以下の方が問題は多いですが、これはまた別のお話)
頻尿のお悩みで受診される方に詳しくお話を聞くと、一口で頻尿と言っても内容は様々です。
例えば、昼夜を問わず1-2時間ごとにおしっこに行きたくなる方、日中はしょっちゅう行きたくなるけれど、夜は1回も行かない方、日中は6回くらいなのに、就寝後に4回トイレで起きる方。排尿の度にたくさん出る方、あまり出ないのに何度も行きたくなる方。
そのそれぞれで対策や治療は異なってきますので、今回は頻尿になるタイミング毎にお話していきたいと思います。(内容が複雑になるので女性の方向けに絞ってお話しします)
(1)一日中頻尿
昼夜を問わず頻尿の方の原因は、膀胱が硬い、尿自体が多すぎる、のいずれかが多いです。
まず膀胱の硬さ問題ですが、膀胱は尿を溜める筋肉の袋であり、風船のように溜まった尿量に応じて膨らんだり縮んだりしています。尿があまりなく縮んでいるときの膀胱の壁の厚さは15mm、尿がたくさん溜まっているときは3mmとかなりダイナミックに変化しており、このしなやかな膀胱の筋肉が硬くなってくると、大きく広がることができず尿が溜められなくなり、頻繁にトイレに行くことになります。年をとると体が硬くなりますが、膀胱も同じなんですよね。
対策としてはあまり頻繁にトイレに行かない!これは大切です。しっかり尿を溜めて膀胱の筋肉をストレッチさせます。甘やかしてはいけません。
昔は「おしっこを我慢すると膀胱炎になる」と言われましたが、これは不正確な表現です。正しくは、頻繁にトイレに行けない環境(仕事上席を外せないとか)の方が水分を控える→排尿回数が減る→膀胱炎なる、です。このような方はしっかり水分を摂ってトイレに行くようにしないと膀胱炎を繰り返します。でも普通の環境では、ちょっとトイレを我慢したくらいで膀胱炎にはなりませんので安心してください。また、旅行など自由にトイレに行けない状況で危うく失禁しそうになった、という経験は珍しくなりませんが、そのようなトラウマがあって必要以上にトイレに通ってしまう方もいらっしゃいますね。気持ちはよく分かります。でもトレーニングでカバーできることが多いので、とにかくやってみましょう。
まず、トイレに行きたい!と思ってもすぐには行かないこと。はじめは5分、慣れてきたら徐々に時間を延ばし15分くらいは我慢してください。単にトイレを我慢するだけでなく、骨盤底筋群の筋トレをするとより効果的です。待合室にやり方の本も置いてありますので、ご来院の際にご覧になってみてください。
トイレを我慢できるようになると、外出時も自信もついてきます。漢方薬で対応する場合は、筋肉をしなやかにするお薬で膀胱を軟らかく膨らみやすくします。トイレを我慢するのが難しい場合はご相談ください。
2つ目の尿が多すぎる問題。尿がいくら大きく膨らむことができても、絶対量が多くては我慢するとかの問題ではなくなります。尿が多くなる原因はいくつかありますが、①冷え、②カフェイン、③水分の摂りすぎが多いと思います。
①冷えについてですが、寒い外にいると尿の量が増えるのはみなさん経験がありますよね。でも下半身に慢性的な冷えがある方でもやはり尿の量が増えてきます。このような方は下腹部や背中にカイロを貼ったり、レッグウォーマーなどで足先を温めることで、けっこう尿量をコントロールすることができますので試してみてください。もちろん冷えをとる漢方薬も効果的です。
②カフェインが尿を増やすことは、最近知られるようになってきましたね。朝コーヒーや緑茶を飲まれる方は特に午前中に尿が増えて通勤中に困ることがあります。朝の飲み物をほうじ茶などに変えてみましょう。
③水分をたくさん摂るのが美容にいい、という情報を今でもSNSなどで見かけますが、これは考えものです。食事からの水分量にもよるので絶対的なお勧め量はありませんが、普通は1.2リットル前後飲めば大丈夫です。2リットル以上飲んでいて頻尿で困られている方は、まず飲む量を減らしてみましょう。