頻尿
2023.12.28

夜間頻尿と持続性生殖器覚醒障害

冬至も過ぎ寒さも本番ですが、この時期になると排尿・排便のお悩みが増えてきます。まずは頻尿、それと便秘。頻尿については今年の初めにもコラムを書きましたが、最近の経験から冬の夜間頻尿についてアップデートしてみたいと思います。

前回のコラムでは夜間頻尿について、虚火とむくみの関与についてお話しましたが、寒い時期になると冷えと瘀血の関与が強くなってきます。(瘀血とはざっくり言えば血流のうっ滞ですが、冬になると冷えと運動不足が瘀血を悪化させやすくなります)

まず冷えの関与について。下半身に冷えが強いタイプの方は、足で冷えた血液が骨盤内を冷やすために尿量が増え、朝起きるまで我慢できないほどになってしまいます。このようなタイプの方は腹巻きをしたり、下腹や腰にカイロを仕込むことで尿量が減り楽になることがありますので、まず試してみてください。また、体が冷えると夜に温かいものを飲みたくなりますが、就寝2時間前からは控えましょう。

漢方薬としては苓姜朮甘湯や真武湯などが有名ですが、職場などが寒く、冷えて腰の重だるさを伴う場合は苓姜朮甘湯、冷えてむくみも悪化している場合は真武湯、というような使い分けがあります。

一方、瘀血に関しては骨盤内の血流がうっ滞するために、排尿に関する自律神経がうまく機能しなくなることが頻尿の原因と言われています。この場合は尿量は多くないのに何度もトイレに行きたくなって起きてしまうのが特徴です。

夏場の瘀血の頻尿は桂枝茯苓丸などでよくなる場合がありますが、冬場の瘀血は少し温めながら流していくのが良いようで、当帰四逆加呉茱萸生姜湯や八味地黄丸の方がよく効きます。

ちょっと横道に逸れますが、日本東洋医学会雑誌の最新号に持続性生殖器覚醒障害(PGAD)に対して当帰四逆加呉茱萸生姜湯が有効だったという記事がありました。持続性生殖器覚醒障害は2000年代になってから言われ始めた疾患概念で、まだ不明な点が多いのですが、平たく言えば性器のムズムズとした不快感が続いてしまう病気です。動いている時は感じず、夜間などじっとしていると症状が悪くなったり、過活動膀胱と合併することがあったりすると報告されています。

性器の不快感というのはなかなか医者にも言いにくい症状なので、どのくらい患者さんがおられるのか分かりませんが、これを読んで思ったのは、夜間頻尿として来られる患者さんのうち一部は持続性生殖器覚醒障害なのでは?ということです。これまでは頻尿の治療として膀胱機能の改善を目標にすることが多かったのですが、尿意を感じるのは膀胱ではなく性器周辺なので、この辺り障害として頻尿を捉え直してみると治療の新しい展開がありそうだと感じています。

頻尿で来院された患者さんには、尿が何回だとか、1回あたりの量がどうだとか、我慢できるかどうかとか、昼と夜で違いはあるかとか、呆れられるほど根掘り葉掘り聞いていますが、今後もさらにいろいろお聞きすることになりそうです。

来年も引き続きよろしくお願いします。