漢方豆知識
2024.01.26

冬のかゆみケア

皮膚のかゆみには夏に悪くなるタイプと冬に悪くなるタイプ(そして夏も冬の悪いタイプ)がありますが、今回は冬のかゆみケアについてのお話です。


冬に胸や背中、腕や足などさまざまな場所がかゆくなる方がいらっしゃいますが、どちらかというと冷え性で、総じてひどい湿疹などはなく、赤みも目立たないことが多い印象です。特徴はとにかく乾燥していることですが、ご自身でケアする時間がない方が多く、あまり乾燥を自 覚されていないかも。赤ちゃんのモチモチ肌を思い出してください。あのモチモチが理想とすれば、ご自身の肌はどうでしょうか。

漢方治療ではかゆみ肌には当帰や芍薬、地黄など血を補う生薬をうまく使って皮膚の潤いを補ったり、荊芥などかゆみを抑える生薬を使ったりしますが、セルフケアもとても大切なので、当たり前のことですがおさらいしたいと思います。


①入浴

お風呂は肌の潤いが流れ出てしまう危険な場所なので、要注意です。第一にはお風呂の温度を高くしないこと。高ければ高いほど肌に必要な油分が取れて乾燥の原因になります。高くても41度くらいまでにして、できれば保湿用の入浴剤を使いましょう。生薬を使った入浴剤もありますね。私の富山大学の師匠は当帰をたくさん入れたお湯は乾燥肌に効果があると話されていまし た。市販にも当帰とエプソムソルトなどを合わせた商品がありますので、セリの香りがお好きな方は試してもいいかもしれません(当帰はセリのような香りがします)。

もう一つ入浴で大切なことは、石けんの使い方です。とにかく全身に石けんをつけて擦らないと洗った気にならない方もいらっしゃいますが、かゆみのある方は控えた方がいいでしょう。石けんで洗うのは首と脇、おしもだけで大丈夫です。それでは気が済まない場合は、手で石けんをつけてサッと洗い流すようにしてください。


②下着やお布団

ヒートテックはあたたかくていい素材なのですが、肌から水分を吸収することで繊維が発熱していることをご存知でしょうか。このために肌が乾燥して痒くなることをヒートテック症候群というそうです(医学用語ではありませんが)。特にウエスト周りなど締め付け部分に痒みや赤みがある方 は、ヒートテックの影響を受けているかもしれません。綿素材などに変えることもご検討ください。 あと、冷え性の方は電気毛布を使ったり、化学繊維の毛布を使ったりされることもありますが、これも皮膚の乾燥や痒みの原因になりますので、寝るときには電源を切るなど工夫をしてみましょう。


③食事

乾燥肌には血を増やす生薬を使うとお話しましたが、食べ物でも血を増やすことを意識してください。薬膳では赤色や黒色の食材が勧められますが、特に赤みの肉や魚は鉄分が多く、西洋医学的にみても貧血を改善する効果があります。富山の冬といえばなんといっても鰤!ちょっと高価ですが、たまには鰤のお刺身食べて、鉄分のほかビタミンB2、DHA・EPAなどもまとめて摂りましょう。反対に控えて欲しい食べ物は辛いものや甘いものなど味付けの強いものです。特に香辛料の効いたカレーやキムチなどはかゆみを悪化させやすいので気をつけてください。

それから水分摂取は忘れずに。寒いと水分を摂らなくなる方もいらっしゃいますが、水分不足は肌の乾燥の原因になる他、便秘も悪化させて肌環境を悪くします。こまめに白湯などを摂るようにしてください。


④保湿

最後になりましたが、一番大切なのは保湿です。実は私も去年あたりから冬に肌が痒くなるようになったので保湿は欠かせません。昔はなんなら粉をふく寸前でも何も感じませんでしたが、歳をとるとだんだん敏感になるんですね。

基本は朝と夜の2回です。私は朝は着替える時に胸や背中の あたりにさっと保湿をし、夜はお風呂から上がったらすぐに全身に保湿をします。よほどの敏感肌の方でなければ保湿剤にこだわる必要はなく、リラックスできる香りのものなどつけると気分の上がるものを使うのが続けるコツだと思います。 背中に手がまわらない場合はスプレータイプの保湿剤もありますので、ドラッグストアなどで探 してみてください。個人的にはセラミド機能成分や消炎症が配合されたキュレルディープモイス チュアスプレーが気に入っています。冬にスプレーはちょっと寒いですが。


これだけのことに気をつけていただければ、9割の方は漢方は不要と思うのですが、それでもやっぱりかゆいという方は一度ご相談ください。