更年期障害
2025.01.30

「私は更年期ですか?」に答える

更年期症状というのは色々ありまして、日本産科婦人科学会作成の「更年期評価表」をもとに多い方から言いますと、肩や首の凝り、眼精疲労、物忘れ、火照り、多汗、イライラ、疲れやすい、不安になる、くよくよする、頭痛、背中や腰の痛み、手足の冷え、関節の痛み、寝つきの悪さ、動悸、指の痺れ、音に敏感、胸が締め付けられる、となっています。他、ここには挙げられていませんが、膣の乾燥感というのもありまして、頻尿、尿漏れ、性交痛など閉経に伴う泌尿生殖器の不快な症状の総称として、GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)という言い方も最近ポピュラーになってきました。あなたの症状はこの中に当てはまりそうですか?

いずれにしてもまあまあろくでもない感じですけれども、この中で疫学的に女性ホルモンの低下と比例するとされている、つまり女性ホルモンを補充することで改善しやすいのは、実は、「寝つきの悪さ、火照り、多汗」のみなんですよね。

その他の例えば、肩や首の凝り、眼精疲労、物忘れといったものは20代でも70代でも起こりうる症状であり、生活習慣やストレスなど女性ホルモン以外の影響も大きいと思われます。

ですので、例えば50歳の女性が婦人科に行って「最近汗が多い」と言えば、「更年期障害でしょう」と簡単に言われると思いますが、同じかたちで「最近目が疲れます」とか「肩が凝る」とか言っても「更年期障害かもね、でもスマホの使い過ぎじゃないですか」とか言われるかも。これを更年期障害と言い切る医者はあまりいないと思います。

これには理由があって、医者の立場からすると女性ホルモンを補充することで改善が期待できそうな「寝つきの悪さ、火照り、多汗」などは、治療可能な更年期障害という意味で診断の意義が高く、反対に「眼精疲労、肩凝り」は女性ホルモンを補充しても効果が薄く、女性ホルモンの副作用と天秤にかけると治療を開始するメリットがあるのか??となります。すると、これらを更年期障害かどうか判断する意義は低い、ということになりますので、医者からするとはっきりさせる意味がない→研究されない→医者それぞれの考え方次第、ということになりがちなんですね。

患者さん側には「更年期障害なのか、そうじゃないのかはっきりしたい」という希望が結構大きいので、ここは医者と患者さんの意識の乖離が大きい分野だなと思います。

個人的には更年期という言葉に振り回されず、今の自分が一番心地よく生活できる状態を目指して必要なものを取捨選択する力が大切と思っています。医者が更年期障害だと言ったかどうかなんて、気にする必要はありません。心地よく生活するために漢方薬が役に立てば嬉しいですが、人生100年時代ともなると50歳はまだ折り返し点。この先を見据えて食事、運動、睡眠を見直すことがお薬に優先すると思います。

私自身のことを言えば、最近、目が乾いたり、疲れたりしやすくなったなあと思うようになりました。更年期障害かもしれないけど、ホルモンを補充して良くなるとはやっぱり思えません。眼科を受診したところでは特に問題がなかったので、メガネ(遠近両用!)を調整して、特に夜はスマホを見ないようにしています。もしこれでもダメだったら、目に良い漢方薬も飲もうかな。。

皆様も更年期に入ったからといって特別なことをする必要はありませんが、お困りの症状があれば、まずは産婦人科か漢方内科どちらかでご相談なさることをお勧めします。更年期症状と思っていたら別の病気が隠れていた、ということもありますので。もし何も病気がなければ、症状によりホルモン補充をするか、漢方薬を飲むか、心療内科への受診を勧められるか、あるいはその全てか、といった選択肢があります。

周りの人に聞いても正しい情報が返ってくるとは限りませんので、迷ったらまずは専門家に相談して自分に合った方法を自分で選んでいってください。