更年期障害
2020.12.15

更年期障害⑤ ーホットフラッシュ(虚熱編)ー

前回は実熱のホットフラッシュについてお話しました。今回は虚熱のホットフラッシュについてご説明したいと思います。

虚熱の方のホットフラッシュは、日中に滝汗をかく、ということはあまりなく、体を動かした時に汗を多く感じたり、顔の火照りを感じたりする程度です。汗が気になるとすれば夜、お布団のなかで寝汗をかくのが特徴です。また、眠りが浅く寝汗で目を覚ましたり、目が覚めたときに体が熱く寝苦しさを感じたりすることもあります。さらに、手のひらや足の裏の火照りを感じて、シーツの冷たいところを探したり、お布団から足を出して寝たりもします。反対に日中はむしろ足の冷えを強く感じることがあり、「暑いのか寒いのかよくわかりません」と困っておられる方も見かけます。

こういった方に共通して見られるのは、筋肉の質があまりよくない、ということです。筋肉の質ってなかなか伝えにくいのですが、まず第一に筋肉の量が少ない痩せ型の方、または少しぽっちゃりしていて筋肉にしまりのない方が多いように思います。「更年期障害③」でもご説明しましたが、虚熱タイプの方は筋肉の質がよくないために体温の恒常性を保ちにくく、夜抑えられているはずの交感神経が少しでも高まってしまうと、すぐに体が熱くなり寝汗につながってしまいます。

このような場合のお薬には、清熱剤のほか陰を補う生薬、例えば芍薬、当帰、地黄などを用いて、熱の過剰を抑えていきます。代表的な処方としては、加味逍遙散や柴胡桂枝乾姜湯などがあり、産婦人科でも出されることがあります。

自分でできる対策としては、寝る3時間前には夕食を、1時間半前には入浴を済ませ、部屋を暗くするなどして早めに入眠体制を作っていくことが挙げられます。なかなか忙しくてそんなことはできないという場合は、早めにテレビやスマホを消して、ストレッチをしたり深呼吸を繰り返したりするのも効果がありますので、ぜひ生活に取り入れてみてください。

そして、より根本的な対策は筋肉の質を高めていくことにあります。タンパク質を摂り、筋トレをすること。これは虚熱を克服するだけでなく、他人のお世話にならない素敵な老後を迎えるための必須条件です。筋トレはいつから始めても遅すぎるということはありません。ここは強く強調したいのですが、少し話がそれますのでまた別の回にしたいと思います。(しのぶ)