冷え性
2021.02.15

冷え性③

今回は全身が冷えているタイプのうち、筋肉が落ち、内臓の働きが弱わっている方のお話です。

冷えが内臓におよぶ、あるいは冷えのせいで内臓が弱っている方は、食欲が落ちていたり、食べても下痢をしやすかったり、栄養を吸収する力が低下しています。このため食べ物から熱を得ることが難しく、冷えの悪循環に陥りやすくもなっています。また体が冷えていると喉の渇きを感じづらくなるために水分摂取が不十分となり、知らないうちに脱水状態になっていることも珍しくありません。そこまでいってしまうと、立ちくらみをしやすかったり倦怠感が強くなったりして、体を動かすどころではなく、ますます冷えの悪循環が加速してしまいます。こういった方は、まずは栄養を吸収できる体にしていくことが第一ですので、胃を温めてくれる人参や乾姜、あるいは附子といった生薬の入った漢方薬を用います。

今回お話、気が付かれた方もいらっしゃると思いますが、どちらかと言うと高齢の方に多いタイプということになります。高齢になって筋肉を落ち内臓機能も低下してくると、それは単純に体だけの問題ではなく、認知機能や精神の衰えに直結してきます。そんなふうにならないよう、高齢になっても冷えを当たり前のものとせず、早めに対処することが大切です。また、筋肉、内臓機能、認知機能が衰え、社会的な繋がりも希薄になった状態について、最近は「フレイル(脆弱)」という概念が提唱されるようになりました。フレイルは要介護の前段階であり、遅くともこの時点で医療介入することにより、要介護状態を回避していこうという考え方です。

フレイルに対する治療として、最近は人参養栄湯という先述の人参が入った漢方薬を用いた臨床研究も多くなされるようになりました。確かに何をしても温まらないという方が、この処方でポカポカ・元気になることがあります。ただ、人によっては胃もたれや下痢をしてしまうことがありますので、お試しになりたい場合はかかりつけの先生にご相談なさるようお勧めします。(しのぶ)