自律神経失調症
2021.06.18

自律神経失調症② ーなぜ失調するのかー

自律神経とは、まず少し噛み砕いてご説明します。

自律神経とは読んで字の如く「本人の意思とは関係なく自律的に働く神経」です。カラダの中で自分の意思とは関係なく24時間働いているところ、すなわち、内臓や血管などの働きをコントロールしています。例えば、走った時には心拍数が上がりますが、これは走って筋肉が必要とする酸素量が増えるのに合わせて自律神経が勝手にやってくれることです。逆から言えば、走っている時に心拍数を落とそうとしても、自分の意思ではどうすることもできません。つまり、自律神経はうまく働いている限りはヒトの活動をスムーズに行うとても理にかなったシステムなのですが、もし走ってもいないのに心拍数が早くなる、動悸がする、という状態になった時、自分の意思でそれを止めることは難しいという、歯車が狂った時の厄介さも同時に持ち合わせています。

自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、走った時で言えば、心拍数を上げるのが交感神経、反対にゆっくりにするのが副交感神経です。大まかには交感神経が働くのはヒトが活発に働くとき、副交感神経が働くのは休んでいるとき、ということができ、アクセルとブレーキにも例えられます。このアクセルとブレーキがきちんと働くべき時に働いていれば、なんの問題もありません。でも、もし、アクセルばかり空ぶかしの状態が続くと、ブレーキのかけ方を忘れてしまい、ヒトという車は暴走してしまいます。例えば、ヒトという車の前に急な登り坂が続いていると、どうしてもアクセルを踏み続けなければならない、それが続くと平坦な道になったのに気がつかずにずっとアクセルを踏み続けてしまう、そんな状態です。私たちの前にある急な登り坂、それはストレスであったり、睡眠不足であったり、過労であったり、いろいろですが、このアクセルとブレーキのバランスを欠いた状態を自律神経失調と呼びます。

自律神経について前置きが長くなってしまいました。書きながら考えていましたが、漢方には自律神経をそのまま翻訳できる概念はありませんし、翻訳を試みてもあまり意味がないような気がしてきました。次回からは自律神経失調の代表的な症状を取り上げて、漢方的な解釈をお示ししてみたいと思います。