自律神経失調症
2021.06.23

自律神経失調症③ ー梅核気ー

自律神経がなぜ失調するのか、前回ご説明しました。自律神経が失調すると、これが支配している内臓や血管が影響を受ける、ということもご理解いただけたと思います。

では、そこで現れてくる症状が動悸であったり、吐き気であったり、息苦しさであったり、人により異なるのはなぜでしょうか?、私は元々その人が持っている弱点が自律神経失調とともに現れてくるからではないか、と考えています。

例えば、自律神経失調症状のひとつに、梅核気(ばいかくき)があります。咽に梅干しのタネが引っかかっているような感じがする、読んで字の如くな症状です。人によっては、痰がへばりついている感じがして咳払いするけど取れないとか、食べ物が飲み込みにくくなった、などと感じる場合もあります。心配になって耳鼻咽喉科で診てもらっても、ポリープも痰も見つかりません。

西洋医学的には「ヒステリー球」や「咽喉頭異常感症」と呼ばれ、ストレスによって食道が痙攣して狭くなったものと言われています。当院に来られる患者さんを拝見していると、元々胃の調子があまり良くない方や、むくみのある方に起こりやすく、メンタル的には細やかな気配りができる方、反対からいうと色々なことを考えすぎて疲れ切っているような、張り詰めた緊張感を漂わせた方が多い印象です。

梅核気は漢方的には咽頭が痰飲によって狭くなったものと説明されることがありますが、もちろんその昔にカメラで覗いてみたわけもありません。思うに、梅核気を呈する方は舌に白い苔が厚くついていることが多く、胃の調子も悪いので、昔の漢方家は胃の痰飲(不要な水が貯留したもの)が上に上がって喉を狭くした、と想像をめぐらせたのだろうと思います。そして実際のところ、このような症状は胃の痰飲を治療することで次第に治っていくことが多いのです。

「弱点」に話を戻すと、元々胃に弱点を持ってる方はちょっとした食べ過ぎなどで胃もたれを起こしやすく、胃の働きを促進する副交感神経の働きが亢進気味になっています。自律神経は常にバランスを取ろうとするので、副交感神経の亢進に合わせるように交感神経の働きも高まりますが、そこにストレスなど交感神経をさらに高める刺激が加わると、胃がどの臓器よりも先に影響を受け、胸やけがするとか、食欲がない、とかいうことになってきます。そして、胃の延長である食道にも影響が及び梅核気を起こす・・。

症状は咽であっても実際の原因は胃にある、と今は実験などで明らかになっていますが、昔の医者は患者をひたすら観察することでこのことに気づいていました。すごいことだなあと思います。

梅核気にはメンタル面でも興味深い特徴があるのですが、長くなりましたので続きは次回にしましょう。