では具体的に何をどのくらい食べるか、というお話ですが、前編で「炭水化物+タンパク質+食物繊維のバランス」と書きましたので、ここからご説明します。
前編で示した厚生労働省の朝食に関する調査を見ると朝は菓子や果物等のみという方も多いことから分かるように、朝食は炭水化物に偏りがちです。もちろん何も食べないよりは、パンだけでも食べた方がいいでしょう。しかし、そのような朝食には大きく分けて、次の2つの問題点があります。
①食後血糖が急激に変化してしまう
②脳内の神経伝達物質が十分作られない
まず1つ目の血糖値の問題です。糖質を食べると血糖値が上がるのは常識ですが、血糖で特に問題なのは「血糖スパイク」と呼ばれる食後の急上昇です。実は血糖値は一日中ずっと高いままであることより、空腹時血糖と食後血糖の差が大きいことの方が体に悪いと分かっています。血糖値の急激な変化は血管にダメージを与え、老化(動脈硬化)を早める原因となります。
朝はコルチゾール というホルモンの分泌が活発なのですが、コルチゾールは血糖値を上げるホルモンであるため、朝食後の血糖は特に高くなりやすい状態にあります。この血糖スパイクを抑える働きを担っているのがタンパク質と食物繊維。糖質と一緒にこれらを摂ると、血糖値の上昇が緩やかになるのです。ダイエットをしていると食事の総カロリーが気になりますが、例えばトーストだけを食べるより、目玉焼きをつけた方が食後の血糖スパイクはむしろ低くなるのでアンチエイジングになるし、体に筋肉は付きやすくなるし、よりお勧めの食事法ということになります。
また、血糖スパイクという概念には、血糖の急上昇とその後の急低下も含まれています。血糖の急低下は体の倦怠感をもたらすため、食べるとだるくなるとか、眠くなるとかいう方も、食事の内容を見直してみてください。
次に2つ目の脳内神経伝達物質の問題です。前編で朝は脳が最もクリエイティブに働く時間帯と書きましたが、脳が活発に働くためには脳神経の末端から神経伝達物質がしっかり放出されることが必要です。この神経伝達物質のもとになるのがタンパク質です。(神経伝達物質といえばドーパミンが有名ですね。朝から好物を食べてテンションが上がるとドーパミンが放出されますので、朝の脳の働きを活発にするに有効だと思います。)タンパク質の多い食品にはトリプトファンというアミノ酸が含まれますが、トリプトファンは神経伝達物質であるセロトニンのもとになります。セロトニンは精神の安定にも大きく影響していると言われ、これを応用したうつ病のお薬があるほどです。
さて、タンパク質と食物繊維の重要性がわかったところで、いよいよ具体的にどのように食べるか、というお話に入ります。朝は何しろ忙しいです。そして午前はできるだけクリエイティブな仕事に時間を費やしたい。となると「簡単」というのが非常に重要ですね。作るのも簡単、片付けるのも簡単、何も考えずに一連の作業ができて、しかも好きなもの。
でも、お料理好きな方は別として、これを毎日考えるのはとても大変です(ここから先はお料理苦手の方のみお読みください)。
なので私は「毎日同じでいい」「ワンプレートでいい」と割り切っています。子どもの頃「同じものばかり食べてはだめ」「一皿料理はだめ、おかずにバラエティを」と育てられた方は多いと思いますので、「毎日同じワンプレート」には抵抗感があるかもしれません。でも、私はこう割り切ることで、朝食へのハードルが随分下がりました。食事のバラエティは昼と夜でつければいいんです。それに「毎日同じ」と思っていてもそのうち飽きてきて、必ず変化していきます。
一皿で炭水化物+タンパク質+食物繊維が摂れ、しかも好きなものということで、最近は「ヨーグルト+果物+蜂蜜+青汁パウダー」というところに落ち着いています。和食にするなら「納豆+シラス+もずく+長ネギのみじん切りかけごはん(解凍)」とか、「ごはんの上にレタスとハムエッグのっけ丼」とか、そんな感じですね。
「理想の朝食」という大仰なタイトルをつけた割に、かなりショボいメニューで申し訳ありません。しかも「食べ過ぎない」という話に入る前にとても長くなってしまったし、漢方にも触れられなかった…。そこは「後編」ということにして、また後日書きたいと思います。(しのぶ)