指の関節が痛い、よもや関節リウマチ?と整形外科を受診したが、年齢のせいと言われた。
これも更年期あるあるです。
女性ホルモンには関節を守る働きもあるため、更年期になるといろんな関節が痛くなります。五十肩もその一つですが、特に目立つのは指の第一関節が痛くなる方ですね。放っておくと関節が硬く腫れてコブのようになり、そのまま戻らなくなります。この状態はへバーデン結節と呼ばれ日本人に多いと言われていますが、その名は初めに提唱したイギリス人の医者の名前にちなんで付けられています。
当院にいらっしゃる関節痛の患者さんを漢方的に診断すると、瘀血+水滞の方が一番多いので、今回はこのタイプについて解説してみたいと思います。
まず、瘀血。瘀血は西洋医学的に言えば「末梢循環障害」に近く、年齢と共に悪くなる傾向があり、更年期の方の多くに当てはまる病態です。このコラムでは何度かご説明していますが、「通ぜざれば即ち痛む」の法則で血流の滞りが関節痛を引き起こします。指を目で見てもうっ血して青いとかそんなことはありませんが、なんとなく関節の重さが自覚されます。冷えで悪化し、温めるとよくなりやすいもの特徴です。また、関節痛だけでなく、体のいろいろな場所にチクチクとした痛みを感じる場合もあります。経血にレバーのような塊が混じっている場合には疑いが強くなりますので、桂枝茯苓丸など駆瘀血剤と言われる漢方薬を使って治療していきます。
次に水滞。水滞は簡単に言えば浮腫み。本来溜まらないはずの場所に水が溜まっている状態です。水滞も「通ぜざれば・・」の法則で、関節痛の原因になっていきます。血の滞りと水の滞り、どう見分けるの?と思われるかもしれませんが、水の滞りがあると特に朝に指の浮腫みを自覚することが増えます。なんとなくこわばって、指の曲げ伸ばしがしにくい感じになり、前の晩にビールなどアルコールを摂ると特に悪くなります。
更年期では水滞単独よりも瘀血を伴うことが多いため、例えば前述の桂枝茯苓丸の中で水滞の部分を担っている茯苓という生薬を増量して対応したり、蒼朮や沢瀉といった生薬を加味して対応していきます。エキス剤であれば、桂枝茯苓丸に苓桂朮甘湯も合わせて飲んでいただくこともあります。
日常生活の注意点としては、とにかく指に負担をかけないことです。庭の草むしりや農作業で悪くなったという話はよくありますので、気をつけてください。特に関節の本来の曲がりとは違う方向への屈曲は負荷が大きいので、不用意に指に力が入らないように注意しましょう。どうしても指を負荷がかかる場合は、テーピングやサポーターなども検討してください。インターネットなどで調べると、クッション性のあるものやおしゃれな金属製のものなど、いろいろなサポーターが売られています。
瘀血や水滞による関節痛は温めるとよくなるので、朝お湯をはった洗面器の中で指の曲げ伸ばしなどをすると痛みが軽くなります。しかし、反対に温めると悪くなる関節痛もありますので、お風呂に入ると関節痛が悪くなる方はやらないでください。この場合は関節を少し冷やすような漢方薬を使う必要があります(この種の関節痛については、また別のコラムでご紹介しましょう)。
また、漢方とは関係ありませんが、最近なにかと話題のエクオールは関節痛への効果が期待でき、整形外科で紹介されることもあるようです。漢方のエキス製剤で関節痛が9割良くなったけどあと一歩というとき、エクオールを追加で飲んでいただくと全快することもあります。サプリメントなので効果はやわらかですが、その分副作用はほとんどありませんので、試してみるのもいいと思います。
関節は変形してしまったらもう元には戻りません。痛みがある方は放置せずに対策を始めてくださいね。