更年期障害
2022.12.29

自己肯定感を高める

数年前から「自己肯定感が低い」とかいう言い方、よく聞くようになりましたね。精神科に相談するほどではないけど、それなりにつらい状況。当院を受診される方も時々いらっしゃいます。

そもそも「自己肯定感」って何なのでしょうか?

これは1994年に臨床心理学者の高垣忠一郎先生によって提唱された概念で、一言で言ってしまうと「自分は自分であって大丈夫だ」という自分に対する信頼感、ということだそうです。

漢方薬だけで自己肯定感を高くするのは難しそうですが、方法がないわけでもない。今回はその辺りのお話をしてみたいと思います。

先にちょっと横道にそれますが、「晴れおんな」「雨おんな」の話から始めてみます。確率論的に言うと、大事な時に晴ればかりの人、雨ばかりの人というのはいないはずなのに、なぜそのように感じるのか。

ちなみに私自身は「晴れおんな」を自認しているのですが、私の理屈から紐解いてみると、まず「曇りは晴れのうち」に数えます。それから、一日のうちの大事なところで降らなければ、「今日は晴れだった」。最悪降っていても、傘が必要なければ「雨ってほどでもなかった」と私の「晴れ」の定義は限りなく広い、だから「私は晴れおんな」ということになる。

反対に「雨おんな」を自認している方は、おそらく、1日のうちにパラッとでも雨がちらつけば「ほらね、今日も雨だった」と思うので、「私は雨おんな」という図式になるのではないでしょうか。つまり、「晴れ」の定義に対するハードルの高低、これが「晴れおんな」「雨おんな」という自認を分け、そして、自分を「◯◯おんな」と定義することで、お天気に対する恣意的な判断が強化されていく。これが、「晴れおんな」「雨おんな」のトリックなのだろうと思います。

ここから本題の「自己肯定感」を捉え直してみると、自己肯定感の高低は、自分に対する「ハードル=期待度」の高低によって規定されるのではないかと思えてきます。つまり、「私って、ホントに理想的な女性。我ながらステキ」と自信があるから自己肯定感が高くなるのではなく、「私って、そんなたいした人間でもないけど、それなりにやってるし、まあまあじゃない?」と、自分に対する期待度を下げた状態で、自信がない、理想とはちがう自分をこそ認めてあげる。それが「自己肯定感」の根っこなのではないかと。「自分は自分であって大丈夫だ」って、そういうことだと思うのです。

先日のテレビで明石家さんまさんが「俺は自分を過信してないから落ち込まない」「失敗してもそれが当たり前と思ってるから」と話されていましたが、正にこれ!と思いました。自分に対する期待度を下げることと、自分を卑下することは全くの別問題なんですよね。

幼少期に親から過剰な期待をかけられた、または、愛情をあまり受けられなかった方は、自分で自分に高いハードルを課してしまうことで、「私は何をやってもダメ」と思い込み、自分を卑下してしまう傾向があります。でも、自分のことを一番愛せるのは自分なのですから、「失敗しちゃったけど、そんなこともあるよね。ドンマイ!(これって死語?)」と自分を励ましてあげる癖をつけていきましょう。

また、更年期になってくると、「昔はもっとがんばれた」「昔はこれくらいでは太らなかった」「昔はこんなに記憶力が悪くなかった」と若かった時の自分を基準にして、知らず知らずに自分に対するハードルを高くしてしまいがちです。でも実際のところ若い頃には戻れないし、戻る必要もない。そこを踏まえたうえで、「今の私は私でそれなりにやれてるよね。うまくいかないこともあるけど、それが当たり前だよね」と開き直る、そうなれたらとても楽に生きられます。

あえて自己肯定感を低い状態において、自分を追い込んで生きる生き方もあると思いますが、それがしんどくなってしまったら、自分に科したハードルが高すぎないか、自分に過剰な期待をしていないか、一度立ち止まって考えてみましょう。

当院では、自己肯定感が低いとお悩みの方には、一旦ハードルを下げる後押しをする漢方薬を処方しています。完璧な青空ではなくても晴れと言い切る、そんな図々しさも悪くないですよ。