一日の始まり、朝は爽やかな気持ちで迎えたいものですが、当院へは「だるくて起きられない」「朝から吐き気がする」「頭痛で目がさめる」など、朝の不調を抱える方が多く来院されます。
インターネットなどで検索すると「自律神経失調症」と一言でくくられていることが多く、「自律神経失調症の漢方薬が欲しい」と受診される方もいらっしゃいますが、一番の問題はどうして自律神経が失調しているのか?という点です。
自律神経についてはこれまで何度もお話ししているので詳細は省きますが、何もしなくても決まった時間に起きて、食べて、寝られる。リラックスすべき時にリラックスでき、勝負の時には集中して力を出せる。そういう当たり前のことが自然にできるのが、自律神経の安定した状態です。
これが乱れるのには、大きく分けて4つの理由があります。
①生活リズムがバラバラ、睡眠不足
②過度のストレス
③栄養不良(バランスの欠如、栄養の不足、体質に合わない食事)
④運動不足
漢方薬で朝の不調を治療をする場合にも、上記の問題があれば必ず同時に修正していけるようお話ししています。
朝の不調の中でも「だるくて起きれない」という症状はお子さんに起こりやすく、「起立性調節障害」という病名がつくこともあります。起立性調節障害も自律神経失調の一つに数えられますが、起き上がった時に脳への血流が低下するために、立ちくらみのような症状を起こす障害です。これが遷延して午前中はずっと起きられず、度々遅刻をしたりお休みをしたりするお子さんは珍しくありません。小児科では脳への血流を増やすために血圧を上げるお薬が処方されたりしますが、なかなか効かないこともあるようです。
では、漢方的にはどのような治療を考えるのか、もちろんお子さんそれぞれで治療は変わってくるのですが、ざっくりとお話ししたいと思います。
私の経験では起立性調節障害のお子さんには痩せ型の方が多い印象があります。このようなお子さんは急に身長が伸び出した後から症状が出やすくなる特徴があり、例えば小建中湯のような陰虚のお薬がよく効くことがあります。
また、夕方から朝にかけての頭痛を伴っているお子さんは、日中の水分摂取がうまくできていないことが多く、排尿回数が少なくて学校ではトイレに全く行かないということもあります。このようなお子さんは水の巡りが悪くなっていることがあり、五苓散を使うと頭痛がとれて朝も起きやすくなる場合があります。
不眠症を伴って朝起きられないお子さんは、性格が真面目すぎるためにストレスを抱えていたり、スマホを使いすぎたりしている場合があり、治療は一番難しい印象です。漢方薬としては柴胡を配合した処方でなんとか緊張を緩ませられるように調整したりしています。
漢方薬を内服する以外の対策として、起立性調節障害の原因は先ほど挙げた4つに集約されますので、まずはとにかく同じ時間に起きること。目が覚めなくても部屋のカーテンを開けて日光を浴び、できれば体を起こすこと。
お子さんのストレスの原因を理解し、できればそれを軽減するために協力すること。
決まった時間に栄養のある食事を摂ること。特に朝に温かい味噌汁を飲むようにお勧めしていますが、これはかなり効果があります。また、痩せすぎている方は少しずつでも体重を増やすようにしましょう。体がしっかりしてくれば、起立性調節障害は自然に治ります。
それから運動。運動部に入っていない場合は、散歩程度でもかまいませんので何か運動習慣をつけましょう。
夏休みは生活リズムが乱れがちですし、たくさんの宿題がストレスになり、休み明けから起立性調節障害が顕在化してくることもあります。お盆あたりから少しずつ休み明けを見据えて対策をしていきましょう。