「更年期」というのは一般的には45歳から55歳くらい(閉経前後5年間)を指し、さまざまな体調の変化が現れる年代です。ホットフラッシュ(急な発汗、火照り)はこの時期に見られる最も分かりやすく、かつ悪名高い症状なので、これを機に産婦人科や漢方内科を受診される方はたくさんいらっしゃいます。
しかし中には30歳とか65歳とか明らかに更年期ではないのにホットフラッシュが止まらない方もいて、「私ってもう(まだ)更年期なのですか?」と、やはり当院を受診される場合があります。
結論から言いましょう。それは更年期障害ではありません。
ホットフラッシュは一種の自律神経の暴走であり、それが女性ホルモンの低下によって加速すれば更年期障害ということになりますが、女性ホルモンが大きく変動しない年代でももちろん生じる場合があり、病名を付けるなら自律神経失調症ということになります。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題。
ではなぜ自律神経が失調するのか、それはズバリ「ご自愛ぶそく」と私は言いたい。緊張しやすい性格とか、仕事のストレスとか、いろんな要素はあるのですが、皆さんに共通して見られるのは「ご自愛=自分を大切にするという意識」が足りない、ということです。手紙の締めの文句になるほど足りない!
自分を犠牲にして会社とか家族とかに奉仕しているうちに、自分を大切にすることを忘れて自分をすり減らしてしまう、それでも無理を重ねるから自律神経が反乱を起こしてしくる。そんな社会の縮図のようなものを患者さんのなかに感じます。
性格を変えるとか、仕事を変えるとか、家族を変えるとか、そんなことは急にできませんが、「意識」はそれこそ意識することで変えていくことができますし、あなたの自律神経を安定させて更年期でさえも楽しく乗り切る大きな効果をもたらします。
今回はそんな「ご自愛」についてのお話です。
さて、急に「ご自愛して」と言われても、どうしたらいいのか困る方もいらっしゃるかもしれません。具体的には後半で詳しく書きたいと思いますが、一番大切なのは「あー、わたし自分のためにいいことしてる、楽しい!」という意識を持つ、ということです。
例えば、運動するにしても「痩せるために辛い運動をしないといけない」と思ってすると単なる苦行ですが、「あー、運動で私の体が喜んでる、活性化してる、とても気持ちいいわ」と思ってすれば立派なご自愛になります。同じ甘いお菓子を食べるにしても「これでまた太ってしまう」と思えばNG行為ですが、「このお菓子が私を幸せにしてくれるの」と罪悪感なく食べれば、それはやはりご自愛です。
ご自愛のタネはあなたが気がついていないだけで、いたるところに転がっています。それをこれから拾うんだと思っただけで私は楽しくなってくるのですが、あなたはどうでしょうか?