第7波もまだ止まず、新型コロナウイルス既感染の方の受診も多くなってきました。
感染の主流がオミクロン株へ切り替わり重症化リスクは低くなっていますが、後遺症に悩まされる方は一定数いらっしゃいます。
Lancet誌2022年8月6月号(VOLUME 400, ISSUE 10350, P452-461, AUGUST 06, 2022)
に掲載された4231人の既感染者を対象とした調査によると、診断から90~150日時点で後遺症のある人は全体の12.7%ということでした。後遺症状の内訳は下記の通り。
味覚障害または嗅覚障害 7.6%
呼吸困難 2.4%
胸痛 2.4%
呼吸時の痛み 0.9%
筋肉痛 7.3%
四肢がヒリヒリする 2.9%
*暑さと寒さを交互に感じる 2.5%
*喉がつかえた感じ 2.4%
*四肢の重だるさ 4.2%
*全身疲労感 4.9%
これらのうち、*をつけた4つは女性の方が発生率が高く、持続期間も長い傾向が見られました。これは興味深いデータですね。まるで更年期のようだなと思って調べると、感染後に月経不順になる方も全体の54%というデータがありました。西洋医学的に見ると新型コロナウイルス感染は女性ホルモンなどに影響するのかもしれません。
漢方的に*の4つをまとめて俯瞰してみると、瘀血(血流の滞り)や痰飲(不要な水の溜まり)が惹起されるのかなという印象があり、お一人お一人状況は違えど漢方薬による改善の可能性は十分にあるなと思われました。
よく話題になる嗅覚障害については、耳鼻咽喉科で当帰芍薬散が処方されることが多いようです。ただ、どちらかというと「副作用もたいしてないから、効くかどうか分からないけど、他にたいして有効な治療もないし…」という消極的な態度で処方されるケースが多いように感じます。実際、日本耳鼻咽喉科学会のガイドライン(治療指針)でもエビデンスレベル(有効性を示す証拠の強さ)は「弱」でしかありません。
でも、たぶん効く人にはよく効くんだろうと思います。過去にすごく効いた人がいたから、ガイドラインに載ることになったはずなので。どんな治療でも言えることですが、漢方的な診断なしに誰が内服しても効果が出るわけではない、ここが現代のEBM(エビデンスベイスドメディスン)と漢方の相性の悪いところです。
もう一つ覚えておいて欲しいのは、コロナの後遺症は放っておいても9割以上が1年以内に改善するということです。後遺症が続くとお辛いとは思いますが、できるだけリラックスして日常生活を送ることも大切だと思います。でも、それでもやっぱり心配、という方はお近くの漢方外来に相談されることをお勧めします。